トライノートゼミ「小研究発表会」参加レポ
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2017/10/14(土)に開催された、ゲーム音楽探求ゼミ「トライノート」の「小研究発表会」に参加させていただきました。
本記事ではその発表の様子を簡単にご報告させていただきます。
(発表会後に懇親会も開催されましたが、そちらには参加しませんでした。ゲーム音楽かるた楽しみたかった……)
発表形式は、登壇してプロジェクターに発表内容スライドを映しながら解説してゆく方がほとんどでした。内容に応じて関連するゲーム音楽を流したり、発表後に質疑応答を設けて発表内容についてやり取りがあったりなど。一人20~30分ほどの発表時間がありましたが、どの発表も面白くて時間が経つのがあっという間でした。
発表内容一覧
1.トライノート研究史:ショウヘイさん
トライノート代表のショウヘイさんによるトライノートのこれまでの活動を振り返りです。私は2083ゼミの頃から参加してたのでゼミ生の方々とは3年以上お世話になってることになりました。時の流れは早い…。(そろそろゼミとの関わりも考えたいところです)
2.FFXVの音楽について:ういろーさん
物語のネタバレは無しに、ゲームシステムなどと音楽の関係やその効果などを丁寧に考察しながらお話しされていたので、とてもわかりやすく奥深い研究でした。
紹介された曲は、3つ。それぞれの曲のフレーズが様々な場面でアレンジされて印象的に使われているとの指摘になるほどとうなづくばかりでした。
Somnus:夜のテーマ、ゲーム起動画面で流れる曲。穏やかなピアノからはじまり、徐々に激しくなる旋律とバイオリンのメロディが絡まりあってどんどんと盛り上がってゆく、下村陽子さんの特色がよく出た曲とのこと。
(余談ですが、自分はNOCTISを聴くたびに涙が流れるようになりました。)
Valse di Fantastica:旅のテーマ、この曲のメロディが色んな形で他の曲に多く使われていることもあり、FFXVのメロディといえばこの曲なのかもしれません。特にゲーム中は、仲間との豊富な会話やオープンワールドを旅する中で出来る様々な楽しみ(釣りとか食事とかキャンプとか)がゲームシステム的にも非常にマッチしているため、旅が楽しいゲームだと話されていました。複数の楽器を使って、メロディとモチーフを繰り返しながら盛り上げてゆく「静と動」が下村さんならではとも。
APOCALYPSIS NOCTIS:六神のテーマ、「ノクティスへの啓示」という題名通りノクティスと六神が関わり合う時に様々にアレンジして使われていた曲です。大きな運命を背負わされたノクティスが、その運命や絶望に抗いながらもがく姿が描かれているとのこと。ダイナミックな弦楽とコーラスによる壮大な楽曲で、これもまた強く印象に残る曲でした。
曲そのものの魅力だけでなく、FFXVというゲームがどのようなことを目指して作られたのか、そしてその上で音楽はどのように用いられているのか、どのような効果を生み出しているのか、とても緻密で丁寧に考えられた発表で大変面白かったです。
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3.星のカービィの曲について~リベンジ~:羽生さん
前世はおそらくプププランドの住人だった、カービィ大好きでなんとアマコンも主催された、羽生さんによる「星のカービィ」シリーズに用いられている楽曲についての発表。
(基本的には)横スクロールアクションゲームであるという視点から、曲の特性から、シリーズを通した楽曲の使われ方から、多角的な視点から、そしてわかりやすく解説されていたのが面白かったです。「豪華さをウリにしない」「”なんでもあり”というおおらかなイメージを通している」など25周年を迎えたカービィシリーズのイメージをしっかりと楽曲が支えていること、既存曲のアレンジの多様さやそれによる世代間の繋がりなど、とても深い発表でした。かわいい顔して侮れないカービィちゃんからますます目が離せないと思う次第です。
(余談ですが羽生さんのコンテンツへの愛し方や関わる姿勢は誠実だと思うので自分も見習いたいと思います)
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(レアサントラだらけだ……)
4.「ゲーム音楽の定義」を改めて考えてみる:Sinonさん
低音でとてもよく通る魅力的ボイスで自らも演奏されるSinonさんの発表。
「ゲーム音楽」ときいて私たちがイメージするもの、というところから論をスタートし、「ここからがゲーム音楽」という線引きをしないことがより楽しめるのでは、という結論にとても賛同します。定義を求めるのではなく、「そもそも定義を決めることが有用か/楽しいのか」というところに足を付けているところが特に。
他の話に関連してしまいますが、ゲーム音楽と呼ばれるものの雑多さや、ジャンルとして捉えられない立ち位置、それこそがゲーム音楽への敷居の低さを担保していると思うし、逆に不安定なところなのかもしれません。
私も以前似たテーマで記事を書かせていただきましたが、それよりも一歩も二歩も進んでかつ未来をむいた素敵な発表でした。 mtdrk.hatenablog.jp
5.ゲーム音楽コンサートの隆盛:りゅうへいさん
自分と同じくゲスト発表で参加されたりゅうへいさん。
ご自身が学生の時に発表した卒業論文のテーマを今回の発表用にコンパクトにして発表してくださいました。テーマは今一番トレンドともいえる「ゲーム音楽コンサート」について、どれほど盛り上がっているのか、どのような人が来ているのか、どのように盛り上がっているのか、それぞれについて実際に統計やアンケートを取られて調査考察した大変興味深いものでした。
「高齢化が進むクラシック演奏団体の興行を支えているのがゲーム音楽!」という主張をされていましたが、私はどちらかというと「ゲーム音楽演奏会は現状では、ビデオゲームを嗜んで育った世代のみしか聴いてない」という認識なので、クラシックコンサートの悩みはすなわちゲーム音楽演奏会の未来の姿そのものだと捉えています。これからどうなってゆくか、どうすればいいか、ということをぜひぜひまた話し合ってみたいなって思います。
6.ゲーム音楽ライブの「マナー」を考える:だらけ
以前書いた記事の内容を発展させて発表させていただきました。
演奏会形式とは違ったライブ形式ならではの楽しみ方や、現状はどのような感じなのか、その楽しみ方をするための課題とはなにかを提案してみました。
発表の補足としては、
「奏者の演奏をただ聴くだけの一方的な楽しみ方ではなく、ライブでは奏者の演奏と聴衆の歓声によって盛り上がる熱気やその双方向性による一体感を楽しむのもいいのではないか」
「双方向性による一体感は、聴衆だけでなく奏者も楽しめる楽しみ方なのではないか」
「現状はライブみたいな楽しみ方をしたいけれども、周囲の雰囲気に合わせて感情を表に出さない人たちも多いのではないか」
といったところです。音楽の楽しみ方は人それぞれ、というところが前提条件なのでまだまだ課題の多いところだと改めて感じました。いろんな方から質疑を頂いてとてもうれしかったです。
7.ゲーム音楽演奏会の集客をしたい:なおさん
ご自分でもいくつかゲーム音楽演奏会を共催、主催されたなおさんが、ご自身の経験から演奏会の集客をするためにどのようなことをしてきたのか、というお話。
私は「お客さん」の立場でしかないので、なおさんの発表はとても面白くて勉強になることばかりでした。演奏予定のゲームの特性(知名度があるか、旬のものかなど)に応じて適切なプロモーション方法があること、そしてゲーム音楽演奏会に来る人、来なかった人たちはどのような人たちなのか、そしてどこをターゲットとしてどのようにアピールしてゆくのか、という話は実際の経験談と合わせてとても面白いものでした。
8.レトロゲーム音楽の雄、FM音源を聴いてみよう:へにょべ~さん
FM音源だけでなく、いわゆる「ピコピコ音」と称されるような矩形波、三角波、波形メモリ、サンプリング音源、FM変調などを実際の音源と共に歴史をたどる大変貴重な発表でした。同じ曲でも音源でこれだけ印象が違うとは!とか波形メモリの面白さ!とか聞きながらずっと興奮していました。
あとはやはりビデオゲーム黎明期はPCやアーケードの賑わいや発展があってこそだというのを改めて実感しました。自分自身はストⅡ全盛期に小学生だったので、格ゲー大流行だったけどゲーセンのあのアブナイ雰囲気に負けて指をくわえてみました。そういった意味でアーケードなどに触れる機会があまりなかったので、今回はそういった魅力も気づかせていただけました。
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9.ゲーム音楽かるた:ロドさん
ご自分で曲を作ったりもされるロドさんの発表です、ぶっちゃけめっちゃ楽しみにしてました。
ゲーム音楽かるた、というトライノートの皆様を中心に楽しまれているものを、ロドさんがどんどん改良していった経緯や実際の楽しみ方や遊んだ時のエピソードなどをお話頂きました。遊びたかった!!かるた実際に遊びたかった!!!今度はぜひぜひ参加させてください。ゼノブレイドは譲りません。譲れません!!!!
ロドさんの「普段あまりゲーム音楽に興味関心がない人でも楽しめるように」という姿勢がとても素敵でした。自分も提案しましたが、ゲーム音楽かるたは突き詰めればどんどんマニアックになるし、そういったマニア同士で楽しめるツールや遊びに留まってしまいそうなのに、そこに留まらずいろんな方の意見を聞きながらより楽しめる方向に工夫されていたのは、大きな学びであり気づきでした。
10.FFとDQのメインテーマに対する印象分析:なかむらさん
ウルトラマン好きなナカムラさんの発表です、「素敵な演奏会を聴いた後に、感想を述べて感動を伝えたいのに語彙力がない!」という皆が共感できる悩みから始まった研究とのこと。FF3のメインテーマとDQ6の序曲を聴いて、それぞれの印象を用意された印象語を選択して集計し、それぞれの曲に対してどのような特性があり、どのような印象を持っているのか、というのを統計を用いて分析されていました。
個人の感性と語彙力に大きく依存するしかない「感想」というものを発信するのは難しいと、自分の語彙力の無さを痛感している自分にはとてもありがたい発表でした。勿論感想は個人によってさまざまにあったほうが面白いのですが、それぞれがどのようなところをどのように感じているのか、という作品の魅力を検証する試みとしても面白いと感じてました。語彙力高まりますように!
11.ゲーム音楽「四属性聴き比べ」の結果と分析:Sinonさん
〆は再度Sinonさんが登壇されました。
以前私も参加したゼミで取り上げた「四属性聴き比べ」の結果と分析でした、あのゼミはとってもしんどかったけど、とっても楽しかったので一生忘れないと思います。
それぞれの曲でどのような属性を感じるのか、そしてそれはなぜなのか、それぞれの属性にはどのような特徴があるのか、またそこからさらに一歩進んだ「知ってる」補正という考察はゲーム音楽ならではの視点だと思いました。「その音楽が使われているゲームを遊んでいるかどうかでその曲に対する感じ方が変化する(より強くイメージできる)」という点を実証したこと、そしてそういった補正がない曲を「シーンとイメージが合致した曲」として取り上げる、他にも話し合える属性があるのではないか、などなどまだまだ話がつきない分析だと感じました。
これだけ長いまとめになっても、それでも発表の一部しか伝えられないくらい皆さんの熱がこもった本当に勉強になる一日でした。もっともっともっとここで発表された皆さんと参加された皆様と一緒に話し合って、考えて、楽しんで、勉強して、ゲームしたいと心の底から思ったゼミでした。
次回もいきます!