「ほっすぃ」に見るゲーム音楽演奏会の魅力
2017/3/19 エポックなかはらで開催された「トゥインクルスターウインドオーケストラ〜はるかぜのえんそうかい〜」にお邪魔してきました。
「星のカービィ」シリーズの様々な曲のアラカルトメドレーなど、今年25周年を迎えるカービィの様々な魅力をこれでもか!と詰め込んだ濃厚で温かな演奏会でした。
どの演奏もとても素敵なものでしたが、圧巻だったのは「星のカービィスーパーデラックス」を全曲演奏したメドレー集でした。
そしてこのSDXメドレーの演奏が、いわゆるゲーム音楽演奏会の魅力が詰まった形かもしれない、と感じました。
そこで、今回はSDXメドレーの演奏の様子から、ゲーム音楽演奏会の魅力を語ってみようと思います。
(記事目次)
- ゲームプレイと連動した演奏順序
- SEまでこだわる
- ゲームプレイで楽しんだ「小ネタ」の再現
- ファンによるファンのための
(ゲームプレイと連動した演奏順序)
ゲーム音楽演奏会で多いのは「ゲームをプレイした時に聴く順番で曲順を決める」という形式だと思います。特にRPGのイベントシーンに沿ったり、アクションゲームではそのステージ構成に合わせたりすることが多い印象です。これは「音楽を聴くことで自分のゲーム体験を思い出し、その思い出と連動して曲を楽しむことができる」という効果が期待できます。
ほっすぃのSDXでは、ゲームを起動させて始まるオープニング曲からはじまり、ステージ選択をする画面の曲、さらには各ステージのゲーム開始時から各イベント及びエンディングまでしっかりと合わせてくる素晴らしいこだわりでした。
ゲーム音楽演奏会では「自分のゲーム体験と音楽をリンクさせる」という楽しみ方を狙った演出が多く見受けられます。楽曲そのものの素晴らしさを楽しむだけでなく、自分の楽しかった時を思い出すことができる、というゲームファンならではの楽しみ方を提供できるからでしょう。ただし、一口に「ゲームプレイで聴く順番とリンクさせる」というのは簡単ですが、それをメドレー形式に編曲すること、そしてそれを演奏することは、並々ならぬ苦労が詰まっています。これを実現してしまう楽団の皆様の愛情の深さにはただただ頭が下がります。
(SEまでこだわる)
ほっすぃの皆様の演奏はとても素晴らしいものでしたが、私が特に素晴らしいと思った点は「ゲーム内サウンドエフェクトの再現及びその活用」でした。1UPアイテムを取った時の音、それぞれのコピー能力の音、果てはミニゲーム「刹那の見切り」のゲーム選択のSEから相手にHITした時の音まで!いわゆる「楽器」で再現できない音は、いろんな調理器具やサイレンなどを用いてゲーム内のSEを再現させていたところに職人のこだわりと愛を感じました。脱帽ものでした。
ゲーム音楽演奏会でSEがなぜ大事なのか?それは「SEはゲームを実際にプレイした人しか聴けない音であり、ゲーム操作とリンクして鳴らされる音だから」です。ゲーム内で幾度となく耳にして、なおかつ自分がコントローラーのボタンを押したとき、アイテムを取得したときなどに連動して鳴る音がSEです。つまり「ゲームプレイと一番密接にかかわっていて、ゲーム体験と切り離すことができない音」といえるでしょう。先ほどの項で、「音楽そのものの良さ+ゲームプレイ時の楽しい気持ちを思い出させる」という点がゲーム音楽演奏会の良いところという趣旨を述べましたが、SEは「ゲームプレイ時の記憶」を最も呼び起こす力が強い音だと思います。
(ゲームプレイで楽しんだ「小ネタ」の再現)
SDXの音楽はとても素晴らしい曲ばかりですが、もちろんゲームとしての魅力もたくさんあります。実際にゲームをプレイして色んな場面が記憶に残ったと思います。ほっすぃの皆様は、そんな「ゲームプレイしてた時に印象に残ったワンシーン」をなんと舞台上で再現するということも盛り込んでいました。ゲーム起動時の0%セーブデータ、メガトンパンチの星割れ、グルメレースの勝敗の一喜一憂、そして刹那の見切り完全再現!!様々な大道具小道具を駆使して小舞台までしてしまう奏者及び関係者の皆様のエンタメ力には頭が下がります。また、ゲームをプレイしたことがある観客だからこそ、そういった小ネタに反応し、会場みんなで笑って盛り上がって一つになれるということができた演奏会だと思います。
(ファンによるファンのための)
簡単ではありますが、当日に感じた素晴らしいと感じた点をまとめてみました。今回のほっすぃで感じたことは「カービィファンがカービィファンのために理想の演奏会を形にしてみた」ということです。単純にゲームにでてくる曲目を演奏するだけでなく、その曲がどのような場面で使われ、どのような思い出を残し、どのような素晴らしいところがあって、その素晴らしさをどのように表現するか、そしてその素晴らしさをファンの人たちとどのように共有し、どのように楽しむか、というところまで練りに練られた演奏会だと言えるでしょう。(またそのこだわりは、演奏だけでなくパンフレットのデザインや記述までも徹底していました)演奏会開催にかかわったすべての人たちに感謝してもしきれないほどです。
ゲーム音楽演奏会は、演奏会にあまり慣れていない人たちでも、ゲームをプレイしたことがあれば必ず楽しめるように構成されているものが多いと思います。普段は音楽にそこまで注目しない方でも、ぜひともゲーム音楽演奏会に足を運んでみてください。自分が好きだったゲームを、さらに好きになれるような演奏会であること間違いないでしょうから。