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ゲームとゲーム音楽と雑記

胸いっぱいの感動を集めて——『Xenogears 20th Anniversary Concert -The Beginning and the End-』感想

4/8(日)に舞浜アンフィシアターで開催されたXenogears 20th Anniversary Concert』の昼公演を観覧してきました。最高のコンサートでした。セットリストとかは他の方にお任せして、私が心に残ったことや考えたことをひたすらに書き留めてゆきます。

 

・骨太で完成度の高い構成——「オーケストラサウンド」「民族音楽」「宗教音楽」

公式パンフレットで光田氏が語っているが、ゼノギアスには様々なジャンルの音楽が用いられている。光田氏はそれらを「オーケストラサウンド」「民族音楽」「宗教音楽」に大別し、演奏されていた。セットリストはゲームプレイで聴く順番を意識して構成されており、異なった音楽をしっかりと演奏するだけの編成が必要だった。その為スペシャルバンド・オーケストラとして編成された「アーネンエルベ・オーケストラ」には、弦楽器、管楽器、ギターやドラムのバンド編成、アコーディオンケルトハープなどで編成され、そこにANUNAという合唱隊が加わり、最後は勿論ジョアンヌ・ホッグも来てくれた。結果、集められた彼らが最高の演奏をすることで、多様なゼノギアスの音楽を表現することができたのだ。

個人的には、バンド編成が加わったのが最高だった。特に「グラーフ 闇の覇者」からの「導火線」の迫力!会場に爆音で唸るギターがこれでもかと鳴り響き、力の求道者グラーフの緊張感を最大限まで増幅させた。オーケストラで映える美しい旋律の「飛翔」が強いドラムの音に支えられてこれほど高揚感のある力強いアレンジになるなんて、全く想像できなかった。

 

・演奏される中で次々とお色直しされてゆく楽曲

ゼノギアスにはアレンジアルバムが既に発売されている。民族音楽的な色が強く表れている「CRIED」と全編フルオーケストラアレンジの「MYTH」だ。どちらもそれぞれ素晴らしい魅力があるアルバムだ。今回のコンサートではそれぞれのアルバムで編曲されたバージョンで演奏された楽曲、そして先日発売されたリバイバルディスク「Xenogears Original Soundtrack Revival Disc - the first and the last -」に新録されているANUNAが合唱で参加したアレンジ版などが演奏され、様々な音が楽しめた。強調したい点は、一曲の中でループしてゆく度にアレンジを変えてきた曲もあったこと。例えば「紅蓮の騎士」は最初は穏やかに弦を爪弾くような演奏だったが、2ループ目、3ループ目と繰り返してゆく度に激しく盛り上がっていった。一曲の中でこれほど劇的な展開及びアレンジをしているのはかなり珍しいのではないか。そしてそれは20年の間に演奏されてきたアレンジの経験が大きく活かされているのだろう。

 

・ANUNAの底力

 4/3にキリスト品川教会グローリア・チャペルで開催されたANUNAの日本初チャペルコンサートでも感じたが、ANUNAの素晴らしさが光るコンサートだった。硬質・軟質どちらも表現できる素晴らしいコーラスは勿論、舞浜アンフィシアターの会場を動き、舞台装置を使って回り、フォーメーションを変えながら会場全体にその歌声を響かせていたことは、コンサートの演出面とがっちり噛み合ってゼノギアス音楽の柱である「宗教音楽」の神秘性を極限まで高めていた。

 

・「ゼノギアス」を顕現させた演出

セットリストはゲームプレイ順に構成されていた。それは何よりあの時ゼノギアスを遊んだファンたちの心の中にあるプレイ体験と直接リンクさせる為だろう。曲が演奏される際にゲーム内で流れたアニメーションやプレイ映像が演奏者の後ろに映し出されていた。とここまでならこれまでのゲーム音楽演奏会でもしばしば行われている演出だ。だが今回のコンサートはここでは終わらない。特にライティングが最高だった。冒頭の「冥き黎明」でエルドリッジが墜落するオープニングムービーが流れているその前方で、まるで本当に会場の真ん中にそれが墜落したような光とスモーク演出、ステージ上で円を組んだANUNAがゆっくりと回転する床に乗って会場の四方八方に祈りのような歌声を届け、さらには会場に吊るしてある機材を蒼くライトアップすることで空中都市シェバトを表現するなど、コンサートの進行やゲーム内での演出に合わせた完ぺきな流れになっていた。光の演出で感動したコンサートは光田氏の20周年ライブ以来だ……と思ったら同じ人が担当されていたとのこと。

 

・会場にいた全員が幸せに

アンコールではジョアンヌが「STARS OF TEARS」を歌ってくれた。とても嬉しかった。サントラを買って一番最初に気に入ったのがこの曲だから。軽快なテンポに合わせて自然発生的に手拍子が鳴る、演奏者たちも自然とそれに合わせて盛り上がってゆく。ゼノギアスのエンディングはどこまでも続く海の青と光眩しい空が印象的だった。まさにその光に包まれながら、演奏している人たちが皆笑顔だった。「BALTO」から「LAHAN」へと繋がってゆき、最後は出演者全員がやってきてみんなで手拍子をして歌う。会場の観客も同じように手拍子をする。光田氏が跳ねて最後の一音を奏でたら会場の皆が我先に立ち上がりスタンディングオベーションを贈る。こんなに見事なスタンディングオベーションがあるコンサートは、ゲーム音楽演奏会ではかなり珍しい。それほどに観客の心をとらえたコンサートだったし、駆け付けたファンもまたとても熱意のある人たちばかりだったのだろう。最後の最後に深々と頭を下げた光田氏の姿が忘れられない。氏の誠実な人柄がうかがえる、最高のコンサートだった。