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ゲームとゲーム音楽と雑記

「ゲーム作曲家下村陽子さんが語る情熱の作曲人生」を聴講しました。

2019/8/18にNHKカルチャーセンター梅田教室で開講された、「ゲーム作曲家下村陽子さんが語る情熱の作曲人生」を聴講してきました。今回は聴講した感想を述べてゆきます。

講義はインタビュアーを交えてのトーク形式。下村さんの生い立ちや仕事などを振り返りながら都度下村さんがその時の思い出をたくさんお話してくださいました。

印象的だったのは、インタビュアーから色んな話題を振られた時に、下村さんがその話題に関係するエピソードを、とてもたくさん(しかもめっちゃ面白い)お話してくれたことです。この時にこんな事があった、このエピソードの時はこんなことを考えていたなどなど、その時下村さんが思ったこと、感じたことを生き生きと話されていました。

筆者は同じNHKカルチャーセンターの講演会で、植松伸夫さん、光田康典さん、伊藤賢治さんの講演を聴講した経験があります。その他の方と比べて下村さんは作曲をする時に自身の気持ちや感じたことをとても大切にされる方だという印象でした。勿論ご自身がピアノをずっと習っていたとか、音楽大学に通われていたことなどから、音楽の知識や技術はしっかりとある方なのですが、それ以上にご自分の感性を大事にされている印象でした。

例えば「ストリートファイターⅡ」の楽曲制作の話題になった時「そもそもゲームの音楽なんてほとんど知らなかった」とご自身で振り返っていました。その当時のことを思い出しながら、「(リュウのテーマの話になって)そもそもベースドラムにディレイをかけるなんて不思議」「(ブランカのテーマの時には)和音やスケールで考えると、この転調は不自然に感じて、他のスタッフさんに修正されそうになった」などといったエピソードを振り返りながらも、「音楽の知識等から考えれば少し違和感を感じるようなことでも、それが合っていると思ったものを作っていった」と振り返っていました。

また「ファイナルファンタジーⅩⅤ」の楽曲制作の際は「NOCTIS」という曲が話題に取り上げられたのですが、下村さんは「主人公ノクティスの内面を表現したかった」と話されています。この時下村さんはノクティスの内面についてとても深く細かく述べられていました。開発チームから伺ったノクティスのキャラクター像からその心情を考え、そのキャラクターの核となる姿をしっかりとらえて曲に仕立てた、と筆者はお話を聞いて感じました。「FFXV」を遊んだ筆者は、この曲がノクティスのことをまさにしっかりと表していると感じていたからです。この洞察力とキャラクター像の底の底まで表現することができる感性が、下村さんが作る曲に良く表れているのではないかと感じました。

その他色々なお話をされていましたが、そこから伺えたのは下村さんの集中力の強さです。夢中になると時間が経つのも忘れてしまう、集中しすぎて時々関係各所に連絡を忘れてしまう……なども話されていましたが、曲作りに対する熱量はとてもはかりしれないものだと思いました。

自身の気持ち、これから作る物への深い洞察力、浮かび上がったメロディを曲に仕立てる集中力、納得いくまであらゆる手を尽くすこだわりの強さ、などなど下村さんの作る魅力的な曲の裏側をほんの少し覗けた気がした、そんな講演会でした。