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考察:「ゼノブレイドDE」の追加要素を見て

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Nintendo Direct mini 2020.3.26」で「ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション」(以下文中「DE」と表記)の続報が発表され、発売予定日、ゲーム内映像紹介、追加ストーリー等様々な内容が明らかにされました。本稿ではそこで明らかになった「ゼノブレイド」(以下「無印」と表記)との相違点を改めて整理してみます。

 

なお、本稿は「無印」及び「ゼノブレイド2」(以下文中「2」と表記)の物語の核心に触れた記述が含まれます。閲覧の際はご注意ください。

  • アルヴィースのチョーカー
  • 追加ストーリー「つながる未来」
  • 追加要素の是非と雑感

 

 アルヴィースのチョーカー

 

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 紹介映像内でアルヴィースの姿が確認されました。首元につけているチョーカーのデザインに変更がなされています。

このデザインは「2」における天の聖杯のコアクリスタルと同じ形をしています。これは偶然の一致ではありません。なぜならばアルヴィースは天の聖杯=トリニティプロセッサーのひとつである「ウーシア」であることが明らかにされているからです。

「無印」におけるアルヴィースとは、かつて科学者クラウスが「ゲート」の力を用いて行った相転移実験によって生まれた(別次元の)世界を管理する「機械」(アルヴィース談)とされています。

「2」では相転移実験及びその後の「2」の世界を創生したいきさつがクラウス自らの言葉で明らかにされています。トリニティ・プロセッサーとは、扉(ゲート)という多元宇宙の繋ぎ目から得る高エネルギーの供給・管理に用いられていたが、クラウスの手によって相転移実験に利用された。その結果、ウーシアは新たに創造された(と表現します)世界へと転送されその世界を管理する立場であると明らかにされました。

 アルヴィースのチョーカーデザインが変更されたことで、「2」の世界観が「DE」に還流された形になり、ゼノブレイドシリーズ(及び他のゼノ)としての結びつきが強くなったと言えます。

 

追加ストーリー「つながる未来」

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「DE」では追加ストーリーとして、本編の”その後”を描いたものが追加されます。PVでは新しいマップ「巨神肩」やそこを飛び回るテレシアの姿などが確認されます。ここで留意したいのは、エンディング後の世界であるということです。

「無印」では物語の終盤に、シュルクが自ら新しく生み出したモナド(世界を創生する)によって、これまでザンザ(クラウスの半身)という「神」によって創り出された世界ではなく、「神無き世界」という新しい世界を創造します。エンディングでは相転移実験によって生み出された閉じた世界が解放され、新しい世界が生み出された(もしくは閉じた世界が瓦解し、本来の世界の姿を取り戻した)ことがわかります。

ここで疑問がうまれます。

ここで追加される「巨神肩」とはどこに存在するものなのか?「無印」では巨神と機神の骸という、大きな大地の上に生物は生息していました。しかしその世界はシュルクの手によって解放され、新しい世界に生まれ変わりました。「無印」のエンディングでは、目の前に広がる海の先に巨神の骸と思われる姿も確認できます。エンディング後の世界の巨神肩はどこにあるのでしょうか。

考えられる可能性は2つあります。

一つは、新しく創生した世界にも巨神肩の名付けられている場所が存在していること。エンディングでは巨神界で生活していた種族がそれぞれ確認できており、登場するロケーションも(形こそ違えど)これまで訪れたものに近いので、世界の形が大きく変わっていないのではないかということです。

もう一つのヒントはPV内にあります。

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PVで紹介されている巨神肩にある皇都上空に裂け目が確認できます。 この裂け目が実は別の世界へと転移できるゲートの役割を果たしており、「無印」以降に創生された世界とはまた別の世界に巨神肩が存在しているのではないか、という可能性です。

突拍子もない発想かもしれませんが、これはむしろ「2」をプレイ済みの立場から言えばごく自然に生まれたものです。「2」では追加コンテンツとして挑戦の地というマップが追加されているのですが、これは謎の光「ポータル」に触れることで特に明瞭な理由もなく移動ができます。「2」ではシュルクがこの挑戦の地でレックス達と出会うことができました。このよくわからないポータルに触れると異世界の人たちと交流が出来る、という経験をしたシュルクなら、またよくわからない裂け目に触れることで巨神肩のある世界に行けたとしても不思議ではないという道理が通ると思います。

「つながる未来」は追加ストーリーであると明記されています。それはシュルクによって「もし巨神肩に皇都があって、住んでいる人がいるならメリアは会いたくない?」と語られる「無印」の物語とは繋がりをもたない大きなifの話です。それを受け容れるにはある程度の抵抗があるかもしれないけど、それでも追加ストーリーを描くには勝手の良いものではないでしょうか。本編と深い繋がりのない世界ならば、ゲームバランスや様々なシステムも新しく提示することができる。チャレンジのしやすい設定ではないかとも思います。

 

追加要素の是非と雑感

ここで取り上げた2つの変更点はいずれも「2」発表以降に肉付けされたもの(世界設定及びシステム)と言えます。「2」で明らかになった事実があったからこそ、アルヴィースのペンダントが変更になったともいえますし、「2」の追加コンテンツでのシュルク参戦の事例があったからこそ、今回の追加ストーリーが実現したともいえます。

この事実を、嬉しいと感じる人もいるし、そう感じない人もいると思います。

「無印」はそれ自身で完結出来ている話ともいえました。ザンザという神がいて、閉塞された世界を支配していたが、シュルクによってその神は斃され、神の支配による規定された未来を生きる世界から、そこに生きる一人一人が自らの手で未来を切り拓いてゆく希望溢れる世界に生まれ変わった。その物語は、未来を変えることを恐れずに歩き続けることを肯定してくれる、とても爽やかで力強いものだったと思います。

「DE」は「2」との還流を経ることによって「無印」の物語が、大きな”ゼノ”の世界観に合流して生まれたものだと言えます。

「無印」が好きだった人にとって、後から生まれた作品の影響を受けることについては複雑な思いがあっても不自然なことではないと思います。「無印」の時に出会った世界やキャラクターが公式の手で「改変」されたと感じるからです。ましてや追加ストーリーなどは「無印」の頃に感じたことを大きく変えてしまうものになってしまうかもしれません。かくいう私も「無印」の物語、キャラクター、世界、音楽や、それらが総合的に高くまとまって完成度の高いところがとても大好きなので、心のどこかでは「『無印』はそれ自体が素晴らしいので、そのままでいてほしい」という思いもあります。

自分と作品の付き合い方に正解はない。気持ちは変わってもいいし、それによってゲームの評価が変わるわけでもない。その上で私自身は、「無印」「2」「DE」をそれぞれに楽しもうと思っています。(もちろん「ゼノブレイドクロス」もお忘れなく!)

「DE」が発表されたとしても、「無印」をプレイしていた時の思い出は変わりません。あの時感じたこと、考えたこと、あの物語で出会った仲間たちのことは心の中に大切なものとして確かに存在します。「無印」をクリアした後もずっと移植を心待ちにしてきたし、3DSWiiUへの移植、そしてスマブラへのシュルク参戦、さらには「ゼノブレイドクロス」「2」の発表など、「無印」から地続きに生まれたことがとても楽しく感じていました。 

これまでの様々な流れがあってからこその、「DE」だと思います。楽しみでもあり、不安でもあります。私自身新しいソフトを遊ぶ気持ちで、「DE」を楽しもうと思っていますし、またこれまで「無印」をプレイしていない人が「ゼノブレイド」に出会える良いきっかけになればいいな、とも思います。

 

 

(文中のスクリーンショットは冒頭の動画内より引用しました)

参考文献

souls-seed.blogspot.com

vitaaeternitatis.blogspot.com

vitaaeternitatis.blogspot.com