点数で表現したゲームレビューは鵜呑みにできない
表題の通りです。
ここのところずっと「ゲームレビューとは有用なのか」というようなことを悶々と考え続けていました。今回はそこで見えてきたことを少しずつ文章にしてゆきます。
(目次)
- クロスレビューに対する疑念
- 評価を数値化するために必要なもの
- 数値化とはなにを数値化したものか
- 評価はどのように作られるのか
- レビューする人とレビューをよんで評価する人
- ゲームレビューで書くべきことなど
クロスレビューに対する疑念
例えばamazonでの商品評価や、ファミ通クロスレビューなどのように、ゲームの評価を数値で評価するタイプのレビューがあります。実はこのタイプのゲームレビューが、安易に参考にしてしまうけれども一番参考にならないものと考えてます。
なぜ一番参考にならないとまで言い切れるのか?を考えながら解説してゆきます。
評価を数値化するために必要なもの
amazonやファミ通クロスレビューでは、そのゲームの魅力を数値で表現しています。つまりその数値が高いほどそのレビュアーがとても満足したといえます。ここで注意しなければいけないのは、ゲームレビュアーが満足したゲームが、そのまま「優れたゲーム」という評価につながらないものだ、ということです。とはいえ、私たちは数値化された評価はとても相手に伝わりやすいし、数値が高いものを信じやすいものだと思います。「数値で評価する基準には公平性が必要である」と思います。しかし私たちはもう一度考え直さなければなりません。
数値化とは何を数値化したものなのか
面白かったから10!つまらなかったから3!のようなノリでゲームの満足度や評価を数値化するレビューがゲームレビューには非常に多いと思います。けれどもこのような評価の仕方はとても危ないものだとおもいます。*1
数値というのは、どんな人でも共有できる明確なものです。ところがゲームレビューはその数値を与える「基準」が人によってバラバラに勝手に設けられています。例えばAさんが「このゲームは遊んでて面白くないけど、キャラクターの声優さんが大好きだから10点満点!」という思いで、レビューサイトに10点満点の評価をしたとしても、そのレビューをした他の人は「10点満点つけられているゲームなのだから、遊んでて面白いゲームに違いない!」と思い込んでしまう恐れがあるということです。
そして、そもそも数値化で表現する為に必要なことは、「その数値を定めた基準は何なのか」というところなのです。すべての人に共通した基準がなければ、数値で表すことなど無意味なのです。同じ面白さを感じたゲームだとしても、ある人では8、ある人では5とつけるかもしれません。特にゲームレビューにおいて、この「評価の基準値」を明確に示したものは皆無と断言していいと思います。
評価とはどのように作られるのか
数値化で評価したゲームレビューの危うさの側面が感じられたのではないのでしょうか。ここからはさらに評価とはどのように作られるのかを考えてゆこうと思います。
端的に言えば、同じゲームを遊んだとしても、人によって面白いと感じるポイントや、面白さの度合いというものは大きく異なります。またその面白さの表現の仕方も人によって様々です。
なぜ人によって面白いと感じるポイントが異なるのか?そこには遊んだ人のこれまでのゲーム体験の積み重ねで出来た感性の違いがあると思います。ゲーマーと一言でいっても、そこには多種多様な人たちがいます。アクションゲーマーとパズルゲーマーが同じ感性をもち、同じようにゲームの面白さをレビューできるでしょうか?私はそうは思いません。ファミコンのスーパーマリオの時代からゲームを楽しんでいる人と、スマホで遊べるゲームをとても楽しんでいる今の若い世代の人たちが、同じゲームをみて公正な評価をくだせるでしょうか?それぞれに違った感想が出てきて当然だと思います。ましてやそれを数値化することなんて。
また評価というものは時代が流れると、どんどん変わってゆくものだと思います。技術の進化や価値観の変化などはゲームの面白さにも大きく影響を与えるものですから。
レビューする人とレビューを読んで評価する人
そのゲームのどのような要素をみて、どのような点を評価するのか、ということはレビューする人の視点や感性やそれまでのゲーム体験が大きく影響すると思います。そしてそれのレビューを読む人たちもまたその人の視点や感性やゲーム体験をもっており、レビュー内容に対して反応するポイントも様々だと思います。レビューを書いた人の感性や思いがそのままレビューを読んだ人に伝わることはないと思います。これはすなわち、ゲームレビューをもっと深く興味深く読むためには、読み手自身にもゲームに対する知識や体験に基づく感性などが関わってくるものだと言えるのではないでしょうか。
ゲームレビューで書くべきことなど
まずはゲームレビューと「単純に褒めたいだけの文章」をきっちりと分けることを意識することが必要だと思います。
ゲームレビューで必要なのは、その作品がどのように構成されているのか、それがどのように開発されたのか、自分はどのようなところに面白さを感じたのか(それは決して他人と面白さを共有できるポイントでなくても構わない)などを明確に示すことだと思います。褒めるだけの文章を否定するわけではありません、ただそれはレビューとは別物だということを意識しようというだけです。
あとは、自分が伝えたい面白いところをしっかりと指摘することが、そして自分がつけた評価は変わりゆくもの、そして変わってもいいものだという割り切りも必要だと思います。これからもゲームレビューを書いて、読んで、ゲームを楽しめますように。
*1:そんな中で「100点満点中9999万9830点です」みたいな言い方で褒めるレビューは逆に信頼できるという面白さがある