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ビデオゲームがスポーツになるのは難しい?

スプラトゥーン2の発売が2017/07/21に決まりました。ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドがまだまだ終わりそうにありません、どうも、だらけと申します。ローンチタイトルはたくさん無くていい、最高のゲームが一つあればそれでいい、とつくづく感じます。数と盛り上がりはそれほど密接な関係ではないのかもしれませんね。 

ニンテンドースイッチスプラトゥーン2が発表されて、楽しみなゲームファンも多いと思います。私もそのうちの一人です。WiiUスプラトゥーンを楽しんだ人たちや、さらにもっと多くの人たちと2も遊べたらいいなと今からワクワクしてます。 

また、スプラトゥーン2は、ニンテンドースイッチのハード特性上、ローカル通信を利用したオフラインでの対戦が楽しめるところが、新たな楽しみ方として期待できます。スプラトゥーン甲子園のような盛り上がりを、もっと小規模で気軽に楽しめてしまうことができるということは、ゲームの遊び方の大きな革命だと感じています。 

こういう事を考えていると、「ついにeSportsの時代がきたな!」と思わず叫びたくなってしまうんですが、よくよく考えてみると話はそんなにうまくいくものではないような気がしてきます。そもそも「eSportsは既存のスポーツのように盛り上がれるのか?」という疑問がふつふつとわいてきました。今回はそのへんの雑感をつらつら書き残していこうと思います。

 

(記事目次)

 

 

スポーツの定義とは

話を始めるまえに、スポーツとeSportsがどのようなものなのかを考えてみましょう。

まずはスポーツ。

 競争と遊戯性をもつ広義の運動競技の総称。激しい身体活動や練習の要素を含む。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

続いてeSports

 対戦型コンピューターゲームを用いた競技のこと。エレクトロニック・スポーツの略称。

出典|朝日新聞出版知恵蔵mini

 それぞれの引用を見ながら考えてみますが、eSportsは「対戦型コンピューターゲームを用いたスポーツ」と捉えてもいいかと思います。すなわち、スポーツの定義について考えることが、eSportsの定義について考えることと同じだといえます。

上記の引用にあるように、「競争と遊戯性」がスポーツのポイントだと思いますが、もう少しかみ砕いて考えてみます。

「競争」をするということは、競争する対戦相手が必要となります。そしてその競争相手との間に「遊戯性」を見出すためには、「どのようなことをすれば優れているのか」「どのようなことをしてはいけないのか」という共通のルールが必要となります。

お互いにルールを理解したうえで、互いに競い合うことが楽しい」ということがスポーツの肝にあると思います。 

この定義を念頭にしてeSportsについて考えていこうと思います。

 

 チェスや将棋とビデオゲーム

「ルールに則って、競い合う」ことがスポーツというならば、身体運動を伴ういわゆる「スポーツ」以外のものにも、あてはまるものがあるといえます。例えばチェスや将棋などのボードゲームなどもこの要素を含んでいるといえます。ビデオゲームもまた、操作方法やゲーム内のルールがあり、それに則ってゲーム内の課題をクリアしたり、他プレイヤーと競い合うという点では、スポーツと同じ要素をもっていると思います。

*1

 なので、これらチェスやビデオゲームのような「身体運動を伴わないスポーツ」をeSports、「(激しい)身体運動を伴うスポーツ」をスポーツと大別することもできるかもしれません。しかし、ビデオゲームがその他のボードゲームなどと同じようにスポーツとして楽しみ続けることができるか、というとなかなかに難しい問題なのではないでしょうか。

 

新しいビデオゲームとは新しいスポーツ

先に書いたように、スポーツにはルールが必要です。互いにルールを守って遊ぶことがスポーツの大事な点です。そういった意味では、例えばスプラトゥーンスマブラなどのゲームは「新しいスポーツを生み出した」といえるでしょう。新しい(対戦)ビデオゲームを作り出すことは、新しいスポーツを生み出すことと同義といえるのではないでしょうか。ゲーム内のルールに則り、互いに競い合い、盛り上がり楽しみあう。まさにスポーツの盛り上がりと同じだと言えます。*2

 このように盛り上がっている様子を、ゲームをプレイしている人たちだけでなく、その盛り上がりを共有したい人を集めて、見世物として盛り上げようとする動きが、いわゆるeSports界隈だと思います。すなわちeSportsは、スポーツ観戦と同じようにゲームを遊んで盛り上がれる人たちを「プロゲーマー」とし、そのプロゲーマーを目当てに集まる観客たちを盛り上げようとする娯楽だといえます。

 

 ビデオゲームは商品である

 先ほど「新しいビデオゲームとは新しいスポーツ」だと主張しましたが、実は話はそう単純ではないと思います。例えばサッカーなどの世界的なスポーツは、これまでに多くのプレイヤーがいてたくさんの人が楽しんでいますが、ビデオゲームはそのような「継続的に楽しみ続けて、プレイ人口が増え続けてゆく」ということが難しいと考えます。

それはなぜか?ビデオゲームは「ルールが変化する」ことが多い娯楽だからです。

そしてなぜルールが変化するのか?それはビデオゲームが「商品」だからなのです。これこそが、ビデオゲームがスポーツになれない理由です。

 

それは本当に同じゲームなのか

先に挙げたスマブラを取り上げながら考えてみましょう。

初代のスマブラNINTENDO64で発売されました。多くのファンを生んだスマブラは、のちにゲームキューブで新作が作られました、以降Wii3DS/WiiUとゲームハードが新しくなる度に新作が作られて、その度に多くのファンに楽しまれています。

と、このような楽しまれ方が自然と受け入れられるのがビデオゲームだと思いますが、実はすでにここにビデオゲームに課せられた”鎖”があります。

少し考えてみてください。

NINTENDO64スマブラと、それ以降のスマブラは同じゲームですか?

たしかに、それまでの対戦格闘ゲームで主流だった「対戦相手の体力ゲージをゼロにすると勝利」というルールとは異なる「相手をより多く画面外に吹き飛ばしたプレイヤーが勝利」という点では共通しているかもしれません。

だがしかし、新キャラクターの参戦や、それに伴った新しいアクション(三角飛びや滑空など)、最後の切り札など様々な要素が追加されてきました。これによって、相手を攻略するための思考がそれまでとは大きく変わってゆきます。

また、新しいゲームハードになるたびに、ゲームを操作するコントローラーも変わってゆきました。スティック、ボタン配置と数、タッチパネルやジャイロセンサーなどが搭載されるとともに、形状もそれまでのものとは変化してます。異なったコントローラーを使うと、当然操作感覚も異なってきます。「指に経験値を貯める」ことが重要なビデオゲームにとってこれは大きな変化だと思います。*3

 

  私は、新しい要素が追加されたゲームや、操作方法(及び操作感覚)が異なるゲームを同じゲームとは考えにくいと思います。

そしてそれは操作してプレイする人たちだけでなく、その様子を観戦する人たちにも影響を与えると思います。個人の感想で申し訳ないのですが、ポケモン赤緑以来ポケモンを遊んでいなかった私が、ポケットモンスターX/Yを遊んでみた時にはかなり違和感がありました。赤緑の頃から時代を経て進化したポケモンは、私が知っているものよりもより複雑で、とても遊びにくく感じてしまいました。たとえ同じ「ポケットモンスター」というタイトルがついていたとしても、赤緑とXYを同じゲームだとはとても思えません、そしてXYの対戦の様子を見たとしても、その面白さを十分に感じられないと思ってます。 

もちろん、赤緑とXYにはそれぞれの面白さがあると思いますし、両ソフトに共通した楽しさはあるかもしれません。けれどもやはりそれらを同じものとして同じように楽しむことはできないのではないでしょうか。私はここに、ビデオゲームが「スポーツ」として定着することの難しさがあると思います。 

私は多くのスポーツが広く、様々な世代に渡って楽しまれている理由は、「ルールが変わらないので、年齢や性別などに関係なく楽しむことができるから」という点もあるのではと考えます。この「ルールが変わらない」という点が、ビデオゲームでは実現するのが難しいと考えてます。

 

常に新しくなければ

多くのビデオゲームが、ゲームハードとゲームソフトが一体となって生まれた商品です。そのゲームソフトの面白さを担っているのは、そのソフト自体の面白さだけではなく、ゲームハードの特性(性能やコントローラーの形状など)も大きくかかわっていると思います。 

もし「ルール」を変えずに遊ぼうとするならば、同じゲームハードと同じゲームソフトを継続的に用いて遊び続けることが求められます。それは確かに実現可能ですが、現実的な方法ではないと思います。*4

新しいゲームハードが次々と開発され、そしてそのゲームハードで実現できる新しいゲームソフトが次々と登場してゆく、ということの繰り返しでビデオゲームは盛り上がってきたと思います。つまり、ビデオゲームは次から次へと新しい「スポーツ」を生み出し、そしてまた時が経った後にかつてあった面白い「スポーツ」をリファインしてまた新しい「スポーツ」を生み出している、といえるのではないでしょうか。

そして、そのような特性のため、「特定のゲームソフトでeSportsとして盛り上がれる期間はとても短い」ものになってしまうのではないでしょうか。

 eSportsに適したものは?

 ここからは余談ですが、ではeSportsとして盛り上がる可能性があるものはなにがあるのでしょうか?私はチェスや将棋などが挙げられると思います。これらは商品であるビデオゲームとは異なり、すでに娯楽ジャンルとして確立しているものだからです。

 

 

 

*1:話が逸れてしまいますが、このゲーム内のルールを破る行為がいわゆるチート行為だと言えます。だからこそ改造によるチート行為が対人ゲームでは最も許されざる行為だと私は考えます。

*2:ただしビデオゲームで設定されるルールのほうが複雑であったり、またゲーム内で様々なアイテムなどがあることによって、純粋にテクニックだけで競い合うものではないという点がありますが。

*3:コントローラーの話にいまいちピンとこない人は、かつて自分が遊んでいたゲームが最新ゲーム機でアーカイブ配信されて遊んでみたときの感覚を想像してみてください

*4:例えばスマブラforにおける様々なコントローラー対応や、「WiiUゲームキューブコントローラー接続タップ」の使用がありますが、これはむしろそこまでしないと同じ環境で遊び続けることができない、という難しさの表れだと思います