知らないことだらけ

ゲームとゲーム音楽と雑記

レポ:第98回 ゲーム音楽探究ゼミ トライノート「ゲーム音楽に関する小研究発表会」

2018年10月21日(日)に東山社会教育館レクリエーションホールで開催された、ゲーム音楽探求ゼミ「トライノート」の「ゲーム音楽に関する小研究発表会」にお邪魔してきました。昨年も開催され、筆者も発表させて頂いたのですが、その時の楽しかった気持ちが忘れられずこうしてブログを続けています。有難いことに今回もゲスト発表者として参加させて頂きました。

 

昨年の小研究発表会の様子はこちら mtdrk.hatenablog.jp

 

 会場の近くには公園があり、いい天気だったのでお散歩を楽しみました。

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ジャッジくんとコダック氏もご機嫌。

1.トライノート研究史:ショウヘイさん

トライノート代表のショウヘイさんによるトライノートの紹介及びこれまでの活動の振り返り。218年末で100回目のゼミ開催を迎える予定と。歴史が出来てきた感があって実に感慨深いです。

 

2.演奏された曲調査隊2017:くつ下さん

くつ下さんによる2017年に国内で演奏されたゲーム音楽演奏会(イベント等での演奏を含む)及びその動向による調査報告です。調査の下敷きになるデータは「2083WEB」に掲載されている演奏会情報に、くつ下さんが独自で調査したものを用いたとの事。その数なんと500公演以上。プロアマ合わせたものとは言え、これだけの数の演奏会が行われていることに驚きを隠せないのと同時に、くつ下さんのそのアンテナの高さとそれらの”裏取り”をしっかりされるその仕事の丁寧さに感動しきりでした。

2017年の特徴としては「○○周年」を迎えたゲームタイトルのアニバーサリー記念講演が多かったこと。世界樹の迷宮10周年を皮切りに、逆転裁判15周年、ペルソナ・アトリエが20周年、星のカービィメタルマックス女神転生が25周年、FF・ZUNTATAが30周年、そしてシブサワ・コウ35周年……ビデオゲームの歴史を感じると共に、そうした名作がコンサートという形でお祝いされることが出来る現状に感謝するばかりです。もっともと盛り上がっていったらいいなあと。

また調査の中では「演奏されたゲームタイトル」「演奏された曲目」「演奏されたゲームメーカー」「演奏された作曲者」など多角的な視点から調査したランキングを発表されていました。ここではFFやDQなどのタイトルが多くランクインしていましたが、くつ下さんによるとそもそもシリーズ作の多いタイトルは必然的に演奏される機会が多くなるという点は否めないとのこと。またFFは植松伸夫さんが関わっている「BRA★BRA FINAL FANTASY」(スクエニ公式のFFを吹奏楽で演奏するコンサート)が全国ツアーで公演していること、DQも定期的なコンサートをやっていることから必然的にFFとDQの曲がランクインしてくるのだろうと話されていました。そういった事情を加味してくつ下さんはさらに「同一公園を除いたもの」などを除いた調査結果なども分析しており、現状がもっと見えやすくなるような調査発表をしていらっしゃいました。とても大変なことだと思うのですが……頭が下がります。

さらに、2017年は「ゲームタイトル特化型の公演が増えた」と分析。以前はプレススタートに代表される様々なゲームタイトルを演奏する「オムニバス型」が主流だったが、近年はゲームタイトルに特化した公演が多いと。コンサートにおける集客の具合の変化や公式によるゲームタイトル特化コンサートの開催が関係しているのではともお話されていました。集客の面からなどもゲーム音楽演奏会の盛り上がりを感じることができてなんだか楽しい限りです。

膨大な量のデータを調査し、それらを丁寧に分析する大変な調査だったと思います。とても実になることが多い発表でした。

   

3.飲食店でゲーム音楽を流そう!(選曲編):きっかさん

飲食店で流れている音楽にゲーム音楽を流すとしたらどのような音楽がいいのか?という発表。飲食店の営業時間帯ごとにそれぞれどのようなお客さんがくるのか、どのような空間を作るのが求められているのか、という視点から曲を提案されていました。カフェ、バー、食堂、酒場、ファミリーレストランなど飲食店の形態も様々にある中、求められる「お店の雰囲気づくり」は異なるので、お店のコンセプトに合わせた選曲が大事ではと感じました。またゲーム音楽の中でも「ビデオゲームという現実とは異なった世界」を演出するための音楽であるものは現実の飲食店で流すのは難しいものなのではとも。ゲーム内で酒場や街などを演奏した曲は多々あれど、それがそのまま現実の飲食店にふさわしいものとは限らないという難しさを感じました。

  

4.安瀬聖さんの曲を聴いてほしい:なおさん

 安瀬聖(あんぜひじり)さんという作曲者さんを推す発表でした。作品を発表されているゲーム・アニメがかなり限定したジャンル(いわゆる乙女ゲーム、成人向けゲーム、BL作品のアニメ)などに提供されていること、またご本人がほとんどその活動をネットに公開していないことなどもあり、私も今回のなおさんの発表で初めてそのお名前と作品を知りました。ピアノソロやピアノとストリングスのみの編成で曲を作られることが多く、抒情的な曲や心情を大きく揺さぶる曲を作られているのが印象的とのこと。紹介されていた曲はどれも静かでもの悲しい場面の曲でしたが、個人的にはイトケンさんの楽曲をぼんやりと思い出していた次第。メロディが美しいからそう感じたのかなあなどと。個人的にイトケンさんの「メロディの美しさ」は一筋縄ではいかない魅力があるので、安瀬さんの楽曲にもそれを感じたのでした。キャッチ—とシンプルはまた違う。

  

5.ゼノブレイド2の音楽を聴こう~平松建治さんに注目して~:だらけ

 昨年に引き続き今年も発表の場を頂きました。大好きなゼノブレイド2の音楽について語ってきました。(発表内容については後日改めて公開予定)めっちゃ自由に楽しく発表させて頂けて嬉しいです。今回は楽しく熱く語るのがコンセプトでした。平松さんのエモみを限界突破した曲の魅力が伝わっていれば幸いです。

  

6.ゲーム音楽演奏会に良いホールとは?:ロドリーゴさん

ゲーム音楽演奏会が行われるコンサートホールの特徴とその魅力についての発表。自身もゲーム音楽演奏会を聴きに行くロドさんが、自身の体験やホールの構造などを調べてその魅力を語ってくださいました。今回はいわゆる「ライブ」に使われるものは除いた演奏形式(アンサンブルからフルオーケストラまで)に適したものを取り上げてました。

コンサートホールの形状(シューボックス型、アリーナ型など)から「音の反響」について取り上げてどのような演奏と相性がいいのかなどをロドさんが実際に赴いたコンサートの思い出と共にお話頂けるのはとても分かりやすかったです。これまで筆者は、その演奏会の演奏曲や演奏者たちについて考えることが多かったのですが、コンサートホールそのものの魅力について考えることはほとんどなかったので目から鱗でした。

また発表後の質疑応答の際には、音響業者によって大きく差が出てしまうこと、曲によってはエレキとストリングスを共存させなければいけないゲーム音楽の演奏ならではの難しさ、アンプを通した際に気を付けなければならないこと、等々様々な意見交換が行われました。ゲーム音楽演奏会の、観客、運営、演奏者、それぞれの立場から見えてくる課題が浮き彫りになったとても面白い発表でした。

 

7.おいでよゲーム音楽世界の森~『森のゲーム音楽聴き比べ』から:Sinonさん

 トライノートの皆様が定期的に行われているテーマを決めてゲーム音楽を聴く会で見つかったことをSinonさんが発表してくださいました。今回は「森のゲーム音楽聴き比べ」について。

森の持つ要素(不動のもの、入口からどんどん深くなる多層的な存在、神的存在の在処、木々の間から差し込む木漏れ日の光、現実とは隔離された空間)など様々なイメージを持つ森がどのように表現されているか?というのを使われた楽器、奏法、和音、リズムなどに注目し、ゲーム音楽で表現されている森を5つのタイプに分類。「優しい森」「雄大な森」「神秘の森」「アクション森」「怪しげな森」などの特徴的な曲をそれぞれ紹介されていました。不思議なもので、森のゲーム音楽について考えていると自然と「森」そのものの魅力や定義が気になってゆきます。その結果、森にはとても多くの特性があると気づき、そういった森の様々な面をあらゆるアプローチで表現しているゲーム音楽の多さに感動した次第です。少なくともゲームの世界では森はかなり身近な存在なのかもしれません。

 

8.音楽の感じ方:しらゆさん

先ほど発表されたSinonさんの発表内容にも繋がるところがある、「なぜこの音を聴くと○○を感じてしまうのか?」というところから始めたしらゆさんの発表です。挙げた問いの明確な結論は出なかったとお話しされていましたが、それでも「人はどうやって音楽を認識しているのか」というプロセスの解説、「○○を感じる」の○○はどこから生まれてきたものなのか?に対する考察はとても鋭いものがあって目が離せないほどの面白さでした。

「その時の気分が異なると、同じ曲を聴いても感じ方は異なるのではないか」「生得的傾向(長調が明るく感じる、短調が暗く感じるなど)や音楽そのものの構造が関わっているのでは」というところも興味深かったのですが、個人的には「学習など後天的な要素が大きく関わっている」という点が大きいかもしれないと感じた次第です。また、それと同時に思ったことは「後天的要素などが大きく関わることで、個人の趣味嗜好は千差万別であるはずなのに、こうやって○○と感じる人たちが共に集まって共に良さを共有しあえる」ということが、どれだけ奇跡的でどれだけ素晴らしいことなんだろうかということでした。書籍にあたり考察をするなど非常に難しい発表内容を整頓してお話頂き、また筆者自身がずっとずっと考えてきたことを発表して頂いたのでとても面白かったです。

 

9.『プレリュード』の魅力を語る:mayuriさん

ファイナルファンタジーシリーズでおなじみの「プレリュード」の魅力についてのmayuriさんの発表です。FFシリーズほとんどに登場するプレリュードについて、主にナンバリングタイトルで使われている場面、そしてプレリュードをアルペジオのパートとメロディのパートに分けて分析し、それぞれのタイトルにどのようなプレリュードが使われているか、プレリュードのタイプがどのように分類できるか……というのをその魅力を挟みながら丁寧に解説頂きました。大別するとFFⅣタイプとFFⅥタイプがあると教えていただきました。筆者はFFⅥから遊んだ(FF自体はⅣから知ってた)ので他のバリエーションを聴き比べることが新鮮でした。自分の頭の中にあるプレリュードの姿を一度バラバラにして、もう一度その魅力を教えてくれたこと、アルペジオの美しさを教えてくれたこと、曲の楽しみ方まで考えさせてくれたとても素晴らしい発表でした。プレリュードはFFの「顔」だよなぁとしんみり。筆者はFFXVが一番好きです。

  


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発表の後は懇親会も行われて、引き続き皆様とゲーム音楽の話題についてたくさんお話しして、たくさん曲を楽しむことができました。楽しくまた勉強になる素敵な集まりでした。また行きます!