イベントレポ:トライノートゼミ第96回「夏のゲーム音楽聴き比べ」
2018/8/5に開催された、第96回トライノートゼミにゲスト参加させていただきました。
場所が荒川にほど近いところだったので思わずパシャリ。
夏のゲーム音楽を語るには十分な……いやそれ以上に暑い日でした。陽射しがキツイ。
ゼミの内容は軽い討論会みたいな感じ。
あらかじめゼミ生の皆様が候補として挙げた32曲を聴き比べしながら、色々と感想を言い合ったりしてゆく形式です。
こういったゼミ形式はいいところがたくさんあります。ちょうど一年前に「四属性聴き比べ」というゼミにも参加させて頂いたのですが、
・ゼミメンバーの皆様の選曲が(予想通り)マニアックなので、自分の知らない曲がたくさん聴けて楽しい
・自分よりも音楽の知識・経験のある人たちの意見や感想を直接伺えるのでめっちゃ勉強になる
・ゲーム音楽好きな人たちの集まりなので、普段できない話を共有出来てめっちゃ楽しい
といういいことだらけでした。印象に残った意見などをまとめてゆきます。
・「夏」のイメージと「概念上の夏」
ゼミ生の方の選曲をみてまず感じたのが、選んだ曲調が本当に多彩なものだったということです。ロック調の激しい曲、ピアノソロから始まるバラード、ボッサ、フュージョン、サンバ、テクノ……様々な音楽のごった煮でした。
なぜこんなにも選んだ曲がバラバラなのでしょうか、理由はいくつかありますが、大きなものとして「選曲者が思い描く夏のイメージがバラバラだから」という点があります。選曲者の数だけ、それぞれの夏の姿があると言えます。
ゼミ内ではいろいろな夏の姿が曲を通じて語られていました。うだるような暑い夏、避暑地のリゾートで寝そべって過ごす夏、都会のワルがたむろする夏の夜、まだ陽射しがキツくなる前の初夏、灼熱の外の陽気から逃れた先の図書館で感じる涼しげな夏の一瞬、陽気な夏のバカンスへ向かう車内BGM、都会から離れた田園風景で過ごす夏、日中の暑さが静かに過ぎ去った夕暮れの夏、盛りを過ぎて秋の足音が聞こえる季節、夏に行われるライブフェスなど人がたくさん集まって盛り上がる様子、などなど。
また今回のゼミでは皆さんが沸き立った「概念上の夏」という知見を得たのがとてもよかった。これは「実際の夏の姿から、危険な・不快なものを取り除いて構成された、理想の夏の姿」だと思います。
例えば「田舎の夏に小道を歩く時の曲」として挙げられていた曲からは「陽射しを遮るものが何もなく、直射日光を浴び続けさせられるジリジリとした厳しい暑さ」が排除されていますし、「今は過ぎ去った夏の思い出がよみがえる曲」として挙げられた曲からは「その夏で経験した辛い思い出」が排除されているし、「夏の夕暮れを感じる曲」からは「暑さが収まって蚊や様々な虫が飛び回って体に張り付いてくる気持ち悪い感じ」が排除されているといえます。
勿論そういった諸々のリアリティを取り払って思い描いたイメージを表現するのが曲ではあるのですが、曲を聴いてイメージを受け取る側の人たちが、既にそういったリアリティを省いた状態で「夏」と認識していることが改めて面白かったです。
あとは「選んだ曲で、選曲者が夏が好きなのか嫌いなのかがわかる」といった視点もとても興味深いものでした。選曲ってのは個人の体験や趣向が大きく関わるところだと思います。
・音が季節を表すのか、季節が音を呼び起こすのか。
ゼミ生の方からは以前行った「春の曲聴き比べ」「冬の曲聴き比べ」などで挙げられていた意見を紹介されました。興味深かったのは、その季節をイメージする曲で多く使われる楽器の紹介、及びその楽器の使われ方、メロディ、音楽ジャンルの傾向などの分析です。
夏の聴き比べで挙がったものは、ラテンの楽器・リズム、ウクレレ、スチールドラム、ティンバレスなど暑い地方産まれの音楽や楽器などが使われると夏を感じるのではという視点。さらに、楽器の音色から感じる「風」「光」などの情景が夏をイメージさせるなど。ロックなどで用いられるエレキギター単体だとそうでもないが、清涼感を感じる高音のシンセピアノなどと組み合わせることによって夏を感じるという意見はかなり面白いものでした。
刷り込みやイメージなどで「この音色やメロディを聴くと夏を感じる」という視点があり、また一方で「夏のこのような情景を表現するために、この楽器を使った」という視点もありました。(後者は例えば「夏祭りを表現する為に、祭囃子や和楽器を使った」ということが挙げられます)
季節を描いた曲について考えることは、その季節の本質とそれを表現した楽器やメロディやテンポ、スケールなどについて向き合うことになると思います。曲の魅力を考えたり、さらにはいい曲を作るためのヒントがこの先に転がっているような気がします。大変濃密で楽しい会でした。
またジャッジくんとコダック氏と一緒に遊んでください。