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知らないことだらけ

ゲームとゲーム音楽と雑記

「親子で楽しめるゲーム音楽演奏会」を考える

2016年9月19日に「ブラス・エクシード・トウキョウと楽しむゲーム音楽会」が開催されました。
その演奏会には昼の部と夜の部がありまして、昼の部は「みんなでたのしむ げーむおんがく コンサート」という副題をつけて、親子連れでも気軽に楽しめる演奏会らしい、ということでした。
演奏会をきいて、色々と考えたのでここにまとめてみます。
(当記事はブラス・エクシード・トウキョウさん及び主催の株式会社2083への批判などを目的とした記事ではありません、ご了承ください)


(記事目次)
・ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演での取組
・未就学児がコンサートでお断りされてきた理由とは?
・ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演は誰が観覧対象だったのか
・「親子で楽しめるゲーム音楽演奏会」の提案



(ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演での取組)
まずはブラス・エクシード・トウキョウ昼公演がどのようなものだったのかを振り返ってみようと思います。
ブラス・エクシード・トウキョウの公演は、昼公演・夜講演と分かれていました。昼公演は開場13:00、開演13:30でおよそ1時間のハーフコンサート形式。
また未就学児の膝上鑑賞についてはチケット無料としてました。これは膝上鑑賞なら座席数を必要としないと判断したのだと思います。
発券されたチケットや演奏会の告知サイトには「未就学児が参加される」という趣旨の文章を明記。
チケット代も安価に設定されていました。(昼公演\2,500 夜講演\4,500 いずれも最高値の価格です)
これらの取組を見る限り、
・未就学児の子育てで忙しい人でも、気軽にゲーム音楽演奏会にきてほしい
・むしろゲーム音楽演奏会未体験の人たちにきてもらいたい
という趣旨を感じられるような配慮がされていたと思います。


(未就学児がコンサートでお断りされてきた理由とは?)
現在開催されているあらゆる音楽演奏会(ゲーム音楽演奏会に限らない)では、未就学児の鑑賞をお断りしているものが多いと感じてます。
その前に、そもそも「なぜ未就学児が鑑賞禁止にされてきたのか」ということをしっかりと考えてみようと思います。
その為には、「演奏会で守るべき暗黙のルール」「未就学児がおこしうる行動」から考えていこうと思います。
トライノートというゲーム音楽研究ゼミの有志が以前に発表した「ゲーム音楽演奏会のマナー」を参考に考えてみます。

(引用ここから)
1.「音」のマナー

演奏会は「音」が主役ですから、それを妨げない配慮が大切です。
特にオーケストラなどでは「小さくて繊細な音」の響きを聴くのも楽しみの一つですので、雑音には特に気を配りましょう。

演奏中の私語はしない

物音に注意

演奏中は、ちょっとした物音も周りの人には気になってしまうものです。特に静かな曲では要注意。

・咳やくしゃみはタオルなどで口を抑えて
→ 生理現象は仕方のないところもありますが、タオルで抑えるなど出来るだけ周囲に配慮をしましょう。
・ガチャガチャと音が鳴ってしまう服やアクセサリは避ける
→ 身じろぎしたときに音が鳴ってしまいます。
・激しい身振り手振りは避ける
→ 音ではないですが、演奏中に音楽に乗って激しすぎる身振り手振りをするのは、周りの人が気になってしまうかもしれません。(軽くリズムに乗るくらいは大丈夫でしょう)

途中入退場について

演奏中は、席を移動したりドアを出入りしたりすることは避けましょう。これは出入りする音や姿が奏者や観客の集中の妨げになってしまうためです。(急病などは除く)
演奏会に遅刻し既に演奏が始まっている場合、一曲の演奏が終わるまでドアの外で待機し、曲間で入場することが多いです。(通常はスタッフの案内があると思います)

小さな子供連れの場合

これは演奏会ごとの方針にもよるので難しい問題なのですが、小さな子供はどうしても退屈になり声を出したり騒いでしまうことがあります。 自由席の場合には出来るだけ通路脇などの場所を取り、もし演奏中に騒いでしまった場合は一旦連れてロビーに出ると良いでしょう。(その場合、離席するのは演奏途中でも構わないでしょう)
演奏会によっては「親子室」が用意されている場合もあります。(ガラス窓越しに鑑賞できる部屋) 用意されていない場合や席数が少ない場合もありますが、演奏会側から案内がある場合にはスタッフに尋ねましょう。

(引用ここまで、引用の都合上一部編集改変してます)


引用先で述べられていることをもとに考えてみたのですが、、
・演奏会では「音」が主役であり、その音を楽しむ為に観客はお金を払ってやってくる。
・演奏会にきた観客が、「音」を100%楽しむためには、演奏される音楽以外の雑音を極力抑えるべきである。
・未就学児はそれらの雑音を抑えることが難しい。

というところにまとめられるのではないでしょうか。

ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演では、未就学児が雑音(身振り手振りや大きな声や泣き声など)を起こしうることを想定して、「膝上鑑賞可能」と「途中離席可能」という対応をしていました。膝上鑑賞できることで、未就学児が親と近くにいれる安心感が生まれる、また未就学児が演奏に退屈した時に親がすぐに対応できる(あやすことができる)ことができるでしょう。また途中離席できることで、未就学児が退屈して雑音を出した時に離席して他の観客に不快な気持ちをさせないようにすることもできるでしょう。
ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演では託児室は用意されていませんでした。ただこれは会場設備の問題ですので、別の会場で開催されたとしたら用意できたのかもしれません。


(ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演は誰が観覧対象だったのか)
様々な配慮をしていたブラス・エクシード・トウキョウ昼公演ですが、実際に演奏会を観覧した側として感想を述べてゆきます。

・演奏中に未就学児の声はきこえた
演奏中に子どもの声は何度か聞こえました。話し声だけでなくて、ぐずって泣き出す声のような大き目の声も聞こえてきました。親御さんが席の上であやしたり、離席して演奏場所から離れたところで対応していましたが、それでも気になるくらいに大きな声を出していることが何度かあったと記憶してます。

・未就学児の親の「負担」
このような演奏会にくるほどですから、未就学児の親たちはよっぽどのゲーム音楽演奏会好きなのだと思います。ゆえに演奏会を楽しみたい気持ちはもっていると思います。しかし演奏会を楽しむために先ほど紹介した「演奏会のマナー」を守ろうとするならば、子どもたちが「雑音」を出さないように配慮していたと思います。しかし演奏を聴きながら、子どものことを常に気にかけ、ぐずった時などは離席してあやすなどをする、そういったことはすべて親御さんがしていました。彼らがどこまで演奏会を楽しむことができたのか、と考えるといろいろなことが思い浮かんでしまいます。(もちろん子育ては日常のことだし、親にしかできないことだと思うのですが、子どもがいない時と比較して、ここではあえて「負担」という単語を用いました)

・「子ども向け」の演奏ではなかったのでは
昼の部で演奏された楽曲は、夜の部の楽曲を一部省略した形のものでした。
(参考:コンサートレポ:ブラス・エクシード・トウキョウと楽しむゲーム音楽会
つまり昼の部では、コンサートが始まった一曲目に、ロマサガ3の死食が流れてきたんです。ブラスの重低音がブワァ〜〜って会場に轟いたんです。申し訳ないけど、これは会場にきた未就学児にとって恐怖だったと思います。よく泣き叫ばなかったと思います。それだけ迫力のある素晴らしい演奏でした。けれども、ロマサガ3をプレイしたことがないだろう未就学児たちが楽しめる楽曲だったのか、と考えると疑問符が残ります。ポケモンはあるけれど20年前に発表された初代赤緑の曲だったので、おそらく会場にいた未就学児のほとんどが知らない楽曲だけで構成されたコンサートでした。(勿論夜の部との兼ね合いもあったのでしょうが、当記事では「親子で楽しめるゲーム音楽演奏会」のあり方を考えているのでこのような捉え方をしてます)演奏者の衣装も、黒のスーツやドレスで統一されており、いわゆる一般的な演奏会でよくみられるフォーマルな格好でした。いわゆるゲーム音楽演奏団体の中には、演奏される楽曲に合わせた「コスプレ」などをされる団体もいらっしゃいますが、ブラス・エクシード・トウキョウはそのようなことはありませんでした。子どもたちにウケのいい衣装をする配慮は特に見受けられませんでした。

・様々な課題の解決策は「観客の意識」に委ねる
保護者の膝上鑑賞可能、離席可能という対応策を示しながらも、それらは「コンサート中の『雑音』を消す」という目的を達成することは難しいものでした。開催側はそのような事態になることは予想済みだったと思います。昼の部のコンサートには「未就学児も鑑賞可能です」という文言が付け加えてありました。この文言が示していることはつまり「このコンサートは未就学児が参加するので、コンサートの音以外の雑音が聴こえてくることをご了承ください」ということではないでしょうか。少し突っ込んだ言い方をすれば「このコンサートは演奏音以外の雑音が聴こえてきますが我慢してください」と言えると思います。色々な雑音が聴こえてきたとしても「このコンサートは雑音が聴こえてくるコンサートだからしょうがない」と観客の意識を予めセットしておくことで、観客の不満の声が出ないようにしています。(勿論、未就学児の声を「雑音」と捉える云々については様々な意見がありますが、ここでは前述したコンサートマナーという側面からこのような評価をしてます)

ここまで演奏会中に感じた様々な課題を挙げてきました。ただし、ここで挙げた課題は「親子で楽しめるゲーム音楽会かどうか」という視点で見えてきたものです。特に「一緒に鑑賞した未就学児が楽しめるコンサートか否か」という点に注意して考えてきました。しかし、さらにここからもう少し踏み込んで考えてみたいと思います。
ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演は誰を対象としたコンサートだったのか」という視点に立って考えます。

・演奏された楽曲はロマサガ3クロノ・クロスクロノ・トリガーポケモン赤緑など今から20年近く前の楽曲だった。
・多少の差はあれど、夜講演とほぼ同じ内容が楽しめるラインアップだった。
・演奏中に「雑音」が出ても気にしなくていい(とみんなが理解している)会場だった
・つまり、「雑音」を出してしまう未就学児を連れてきても気兼ねなく楽しめる演奏会だった

ここまで考えた結果、一つの結論が浮かびました。

「ブラス・エクシード・トウキョウ昼公演は、
 ゲーム音楽が好きな親世代を対象とした公演だった」

ということです。
演奏会の対象者は未就学児ではなく「未就学児の子育てをしている親」だったのです。ここから先は完全に私の想像なのですが、さらに一歩踏み込んで言うと「これまでゲーム音楽演奏会に参加してきたが、子育てで忙しくなってしまい、ゲーム音楽演奏会に参加できなくなってしまった人たちに向けた演奏会」と言えるのかもしれません。ゲーム音楽に限らず、アマチュアの演奏会では演奏家どうしの交流が盛んにおこなわれ(親交のある楽団の演奏会に別の楽団メンバーが参加する「身内」の感じと思ってください)ていることから想像しました。(実際来場された方がどのような方たちなのかまではわからないので、この意見については完全に想像の域を出ていません)


(「親子で楽しめるゲーム音楽演奏会」の提案)
ファミコンが発売30周年を迎え、いわゆるテレビゲームを遊んで育った世代が大人になり、家庭を持ち子育てをしている人たちもたくさんいるでしょう。今回のブラス・エクシード・トウキョウ昼公演は、親世代の人たちも気軽にゲーム音楽演奏会に来てもらうことによって、これまでゲーム音楽演奏会に参加してきたけど子育てを理由に演奏会から離れていた人たちを再び演奏会に来てもらうだけでなく、(未就学児が参加できないという理由で)これまでゲーム音楽演奏会に足を運ばなかった人たちも新たにゲーム音楽演奏会を楽しんでもらおう、という主催した2083の志の高さが伺える企画だと思います。文化というのはそれに触れた世代だけでなく、新しい下の世代にどんどん楽しまれ続けていくことで醸成されるものだと思います。2083年にゲーム音楽演奏会がしっかりと文化として根付き活気づくことを目指したものだといえるかもしれません。また、ゲームという広い世代が楽しめる娯楽で生まれた音楽だからこそ、それまで未就学児の参加を断ってきた従来の「コンサート」の形とは異なった新たな演奏会の形を作ることができるのではないか、という期待もわいてきます。
だからこそ、私はこう思うのです。「子どもたちも楽しめるゲーム音楽演奏会」が必要なのではないかと。親と子の両方が楽しめるゲーム音楽演奏会がこれから出てくるのではないかと。一例としては、

・子どもたちも知っているゲーム音楽を演奏する
・入退場及び離席自由かつ託児室なども準備する
そもそも演奏会参加者が自由に声をだしてよい演奏会にする

など、まだまだできることはたくさんあるのではないかと思います。これからもっとゲーム音楽演奏会がたくさん開催されるように、そしてそれらに多くの人たちが参加して、ゲーム音楽を楽しむ人たちがどんどん増えるように。そんな未来がいつの日かくればいいと心から願ってます。